花を活けるというのは、オーケストラを指揮するのに似ている。
ある指揮者は、イメージを押しつけるのではなく、皆をいざなう様にひとつにまとめていく。
花も、それぞれに個性があり、また生まれもいろいろ。活けてやろうなどというのではなく、それぞれの個性を損なうことなく、いざなう様にまとめることができたらと思います。
特にフィオリスタ ベリータの花たちは、個性の強い、演劇で言えば主役級の役者たちが多く、できあがるものは、結構インパクトの強いものが多いです。
すらっとした姿が良ければ、その様に…。
うずくまる姿が良ければ、その様に…。
私はお客様からいつも教えられてばかりですが、いつぞや、私どものお客様が「花を贈られた喜びは、皆で共有しなければだめ」とおっしゃっていました。
本当にそうだなと思いました。
花を贈った人、贈られた人、はたまたその花を育てた人。その花に関わった人が皆、喜びを共有することができたなら、本当にその花を”活かした”ことになるのかな、と思うのです。
良い造園家はナマケ者?
「良い造園家はナマケ者」という言葉があります。どういうことでしょう?
それは、それぞれの植物の性質、例えばアイビーは地を這い、壁があれば上っていく。ゴールドクレストは日光がとても好きで、まっすぐ上に育って、放っておけば見上げるまでに育つが、下の方や中側は枯れて茶色くなっていくんです。
時間が経つと、それぞれの植物はその性質によって変化していきます。それでも組み合わせが良ければ、その地に合っていれば、時が過ぎてもそれなりに自然に大きな手をほどこすことなく維持できるということです。
切花を活ける時もそうです。今日はきれいでも、明日は、三日後は、一週間後はどうなっているのかを考えるようにしています。
花の活け方
よく、花の活け方を尋ねられますが、「花に聞いて」と言ってしまいます。
面倒だからそう言っているのではありません(笑)
この言葉は、昔、私が勤めていた花屋で勉強させてもらっていた時、女性の先輩に何度も言われた言葉です。
その時は、「何言ってんだ?」とピンと来ない。何となくわかる気もするけど…、という感じでした。
今になってその一言の意味がよくわかります。「花に聞いて」もうその一言に尽きるのです。
花が居たいところに、花が居たい様に活けるのが一番いいのです。
ただ、うまくそれぞれの居場所にいざなってやればいいのです。でもそれが難しい…。
いつも抵抗されるんです。「こんな所はいやだ!」って。
今日も花と折り合いをつけながら、お客様の喜びのシーン、悲しみのシーン、笑顔のシーンのお役に立てる様に、楽しみながら仕事をしたいと思っています。
フィオリスタ ベリータ店主
石井 豊
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